マーケター視点で見る消費者の購買行動
ゼロイチ Cafeの豊田です。インターネットでの購買が増え、マーケティングという言葉や仕事が脚光を浴びるようになりました。AIDMAやAISASモデルなどのマーケティングのフレームワークを聞いたことある人も多いのではないでしょうか。ですが、マーケティングとは具体的に何でしょうか?企業はマーケティングによって何をしているのでしょうか?今回は、マーケティングマネージャーの寺門さんを勉強会にお呼びして、こうした疑問を解消していきます。この記事を読んでマーケターの視点を手に入れましょう!身近なプロダクトや自身の購買行動に新たな発見があるかもしれません。
講師:寺門 諒太
クービック株式会社 マーケティングマネージャー
早稲田大学卒業後、大和証券株式会社にて、資産運用のリテール営業に従事。その後、アクセンチュア株式会社にて、金融機関向けの経営コンサルティング、AI・ブロックチェーンの事業開発を担当。荷物預かりシェアリングサービスのecbo株式会社に入社。事業戦略責任者およびマーケティング責任者として、ecbo cloakを大きくスケールさせる。2019年12月より、予約システムSaaSのクービック株式会社にて、事業戦略、マーケティング、カスタマーサクセスの責任者。
目次
1. マーケティングについてどこまで知っていますか?-基礎観念から位置付けまで-
最初にマーケティングの全体像からお話しします。
・最大の目的は「リピーターの獲得」- 基本のマーケティング-
そもそもマーケティングとはなんでしょうか。教科書通りの説明をすると、マーケティングとは「消費者が商品を購入するまでに、企業が行う取り組みや働きがけ」のことです。こレをさらにマーケターの目線で噛み砕いて言うと、「消費者の買いたい気持ちを作り続けるための一連の作業」です。
オンラインでは、SNSなどの広告投資をすれば、新規顧客の獲得を比較的容易に行えます。だからこそ、獲得した後に顧客の「買いたい気持ち」や「利用したい気持ち」をどう続けてもらえるかが非常に重要なのです。これは「リピーターの獲得」とも言えます。このリピーターの獲得をどれだけできるかがマーケターの腕の見せ所です。
・二つの掛け算? - マーケティングの本質-
マーケティングの本質は以下の二つの掛け算です。
買いたい気持ち作り×売れ続ける仕組み作り
いかにユーザーに認知してもらい興味を持ってもらえるかがマーケティングの基本です。その上で、買ってもらった後にどれくらいリピートしてもらえるかを実際のデータに基づいて分析します。オンラインマーケティングではこのデータが取りやすいのが特徴です。
・マーケターの役割はどう変わる? - 消費者行動-
マーケター消費者行動の流れを分析するに当たり、「 AIDMAモデル」というものを用います。AIDMAモデルとは、次の5つのプロセスから構成されています。
A…認知・注意(Attention)
I…興味・関心(Interest)
D…欲求(Desire)
M…記憶(Memory)
A…行動(Action)
例えば、消費者は各種広告を見て、ある商品の存在を「認知」することになります。その後、商品が自分の「興味・関心」の対象となるものであれば、実際に手に入れたいという「欲求」が起こるでしょう。その欲求、欲しい商品が「記憶」に残り、実際に商品を買うという「行動」に繋がるという流れです。
マーケターはこのサイクル全体を以下のように最適化していきます。
次に、オンラインマーケティングの位置付けを説明いたします。
・オンラインマーケティングの最大のメリットとは?
このように、オンラインとオフラインと大別できます。どちらも重要な手法ですので、両方を使い分けることが必要です。
オンラインマーケティングの最大のメリットは「ユーザーの購入行動を短縮化できる」ことでしょう。例えば、街中の広告やテレビCMなどのオフラインの広告では、多数の人の目に触れる分、ターゲットを絞ることが難しいです。そのため、オフライン広告では購入にまで繋げづらいと言えます。しかし、オンラインのマーケティングでは広告を出すターゲットを絞れるため、ユーザーの購入行動を短縮化できます。自社製品に興味を示さない人よりも、自社製品にニーズを持っている人にアプローチをかける方が効率的です。
また、オンラインで取れる情報は色々あります。代表的なのはWebの行動データや位置情報データや購買データなどです。これらのデータを活用すると、より効率的にターゲット層にアプローチできます。
一方で、オフラインマーケティングはサービス・ブランドの認知に有効な手段です。幅広い層の人目につきやすいからです。また、特定エリアに限定した形でマーケティングを打つ場合にも効果的です。しかし、事前に期待効果がわかりづらく、更に実施後にそのマーケティングの効果を測るのが難しいため、PDCAを回して改善活動をするのが大変です。例えば、CM広告を出した場合、インターネットで認知度調査して広告効果を測定しますが、CMで認知したかどうかが分からない以上、推測の域を出ません。
以上のオフラインとオンラインのメリットをまとめると、オンラインマーケティングは自社製品に興味を持つ人に効率的にアプローチでき、オフラインマーケティングはプロダクトの認知に有効です。このことから、マーケティングによる期待効果には「認知」と「ユーザー獲得」の2種類があることがわかります。
2. ユーザーによって異なるマーケターのアプローチ
ユーザーは大きく4つに分けられます。以下の図をご覧ください。
顕在層はすでに商品やサービスに対して購買意欲を持っている人たちです。そのため、ユーザーの獲得コストが最も低いです。次の準顕在層は、複数の商品と当該商品のうちどれを買うか比較検討している人たちです。そのため、比較検討しているブランド・サービスが多いため、競合との差別化がが重要になってきます。この時、マーケターの役割は自社のブランドを確立して自社のメリットをユーザーに伝えることです。準潜在層は欲しいものがわからず情報収集をしている人たちです。そのため、その人に合う商品は何なのかという興味付けをする必要があり、足の長い作業になります。無関心層は、そもそも興味がない人たちなので、継続的に様々な方向から興味付けをする必要があります。
このようなユーザー層のうちどこを狙うべきかは、プロダクトやタイミングなどによって変わってきます。最初は、顕在層・準顕在層を狙うべきですが、すでにニーズが顕在化している層というのはかなり少ないです。そこで、ある程度ニーズが顕在化している層へマーケティングしていると先細りしていくので、いずれその下の検討層にもアプローチする必要があります。
このセクションの最後に、マーケターがよく使う概念「エコノミクス」をご紹介します。
マーケティングでは常に費用対効果が重要になります。この「1ユーザーを獲得する場合、いくらで獲得できれば費用対効果が合うのか」を表したのが以下の式です。
「LTV」とは、Customer Lifetime Value のことで「1顧客から生み出される生涯収益」を表します。「CAC」はCustomer Acquisition Cost のことで「1顧客を獲得するためのコスト」を表します。また、「CAC*3」とはCAC×3のことです。
たとえば、LTVが3,000円ならば、CACは1,000円以内に抑えるべきということを表しています。このCACを超えてしまう場合、必要以上に投資しすぎているか、そもそも効率が落ちている可能性があるのです。
そのため、いかに低いCACで獲得して、LTVをどれだけ高められるかが重要になってきます。マーケターの仕事とは、このエコノミクスを常に念頭におきつつ、調査・分析・クリエイティブ作成などの一連の業務を幅広く行うことです。例えば、実際に使っているユーザーにヒアリングしたりリピーターに対して緻密なアンケートを取ったりすることで獲得ユーザー層を明確化し、流入経路をコツコツ探すなどです。マーケターは意外と地道な作業が求められる仕事なのですね。
こんな感じでマーケターの仕事の全体像をざっくり把握できたのではないでしょうか。続いては実践編です。初めての試みでオンライングループディスカッションを行いました。最後にそちらをご紹介します!
3. オンライン広告を一緒に考えよう
今回行ったグループディスカッションのテーマは「オンライン広告のストーリーを考えてみよう」です。
そもそものオンライン広告とは、Web上に表示される広告全般を指します。形式は動画や写真などが中心で、Google、facebook/Instagram、Twitterなどの媒体に広告出すことが一般的だそうです。
今回は荷物を預けるコインロッカーに似たサービスの「エクボクローク」を例にとり、マーケターとして、「エクボクローク」をどうユーザーに訴求するのがいいかグループに分かれて考えました。
マーケティング未経験者にとって少し難易度の高いテーマでしたが、グループディスカッションで様々な角度からの意見を聞けて刺激になりました!ある班では、CM広告を出すプラットフォームからCMの内容までを決めていました。また他の勉強会でもこのような時間を設けようと思います。
質問コーナー
恒例の質問タイムの様子です!匿名質問箱slidoを準備したところ、ありがたいことに多くの質問が寄せられました。その一部をご紹介します。
Q. 炎上商法についてどう思うか?
A. 会社の認知度を炎上によって高めるのはマイナス面の方が大きいと感じる。対外イメージが悪くなるため、顧客が定着しないだけでなく、採用できる人が少ないという組織的なマイナス面もある。
Q. オンライン広告を出すならどこに出すのがいい?
A. SNSかな。Facebook やInstagramは特定の年齢や地域にターゲティングできる仕組みが確立されており、特定のユーザーにアプローチしやすい。一方で、記事掲載メディアは避ける。なぜならターゲティングできる仕組みがなく、有象無象のユーザーに出しているため、結果が出にくいから。逆に、特定のユーザー層が明確にセグメントされており、訪問者が何を求めているかわかるメディアは広告元として良いと思う。
執筆者
慶應義塾大学3年 ゼロイチCafeスタッフ 豊田玲奈
ゼロイチCafeにて勉強会の企画・運営を担当しています豊田です!戦略マーケティングや行動経済学に興味があります。最近、ゼロイチCafeの Instagram も活用し始めました!インスタグラマー目指して頑張っている最中です。
ゼロイチCafeの勉強会イベントに参加しませんか?
ゼロイチCafeでは定期的に勉強会イベントを開催しています。学生ならどなたでも参加できるので気軽にお申し込みください!