異才の起業家から学ぶアイディアの起こし方 〜起業家としてのこれまでの歩みとこれからの展望〜
こんにちは!ゼロイチCafeの運営スタッフの豊田玲奈です。
今回は、24歳で起業し26歳で荷物預かりサービス「ecbo cloak(エクボクローク)」を立ち上げ、展開されている工藤慎一さんに起業アイディアの起こし方・磨き方を語っていただき、起業の疑問や不安に答えていただきました。工藤さんのお話は皆さんの起業のアイディアをカタチにする一歩になると思います。それでは一緒に工藤さんの起業家としての歩みを見ていきましょう!

講師:工藤慎一
ecbo株式会社 代表取締役社長
1990年マカオ生まれ。日本大学卒。2014年に Uber Japan 株式会社にてインターンを経験。2015年6月、ecbo株式会社を設立後、オンデマンド収納サービス「ecbo storage」を展開。2017年、カフェや美容室、郵便局など多種多様な店舗の空きスペースを荷物の一時預かり所にする世界初のシェアリングサービス「ecbo cloak(エクボクローク)」の運営を開始。ベンチャー企業の登竜門「IVS Launch Pad 2017 Fall」で優勝。
目次

1. アイディアの作り方 – 1つのアイディアで複数の課題を解決する-
工藤さんが代表を務めるecboは「モノの循環を滑らかにする」をミッションに掲げ、物流の中でも、モノを「受け取る」「受け渡す」タッチポイントの部分に着目しています。そして工藤さんが最初に ecbo で始めたのが「ecbo cloak」です。最初に駅中の物流の課題に着目し、コインロッカーが空いていない・コインロッカーにスーツケースが入らないなどのコインロッカー難民が多く、せっかくの旅行なのに荷物を預けられない人が多いという課題を見つけました。コインロッカー難民は1日あたり17.6万人もいて、荷物を預けるまでに平均で24.9分もかかるそうです。
工藤さんは観光客のコインロッカー不足に着目して「荷物を預けたい人」と「荷物を預かるスペースを持つお店」をつなぐシェアリングサービス ecbo cloak を始めました。荷物を預けたり、また受け取る際には、アプリを見せるだけで成立するため言語の壁もありません。
ユーザーは荷物を簡単に預けられて、店側はコスト0で副収入や新規顧客獲得を狙えるなど双方にメリットがあります。

預けるお店をマップ上のピンで直感的に選択できる
預け先となる店舗も拡大してきた最近では、 Amazon が最初のパートナーとなった「ecbo pickup」のサービスも新たに展開し始めました。
以上の工藤さんの ecboの生い立ちを参考に、アイディアの出発点について説明します!
アイディア作りの出発点は課題解決の意識です。特に、「複数の課題を解決する意識を持つ」ことが大事だと工藤さんは言います。この意識が弱いと、無駄なお金と人員を費やしてしまうことになりかねません。工藤さんにも事業で失敗した経験があるそうで、その中で、ただ「自分の作りたいサービス」を提供するのではなく「お客さんに刺さるサービス」を作るという教訓を得たそうです。この「自分のアイディア」と「お客さんのニーズ」のバランスが大事なのです。
どちらかに比重を置きすぎても駄目なのでバランスを取るのが難しそうですね。
以上をまとめると、アイディアを作るためには、「複数の課題解決の意識を持つ」ことと「自分のアイディアとお客さんのニーズのバランスが半々になるようにする」という2点が大切です。
そして最初に述べた「複数の課題を解決する意識を持つ」を深掘りすると、良いアイディアとは1つのアイディアで1つの課題を解決するモノではなく、1つのアイディアで複数の課題を解決するモノであるとわかります。
「1つのアイディアでどこまで世の中の課題を解決できるか」が良いアイディアの一つの指標になるのです。課題の大半は関連性がないように見えますが、そうしたバラバラになった課題をワンセットにできるのが良いアイディアです。
確かに、工藤さんも「観光客のコインロッカー不足」と「店のスペースの持て余し」と「増加する流通量に対する受け取り場所不足」というバラバラの課題を1つの ecbo cloak というアイディアで解決しようとしていますね。

2. アイデアの実現 -最小限の商品から始めよう-
次にアイディアを実現するためには、ソリューションに対して顧客がお金を払うか実証する必要があります。価値あるビジネスモデルであるかどうかを証明するのです。
工藤さんが紹介してくれたのは、MVP という考えです。MVP とは、Minimum Viable Product の略称で、「顧客に価値を提供できる、最小限の製品を作ろう」という考え方です。
MVP を実践することで、実際に市場に参入するより前に、魅力的なサービスだと受け取ってもらえるのか、もしくは使えない・必要性がないと思われるのかを判断できます。アイディアを完全な状態でサービスや製品として実現するには大きなコストがかかります。しかし、MVP の考え方を使えば限られたリソースでアイディアが実現可能かどうかを判断できるのです。

MVPの説明図
(参照:https://blog.crisp.se/2016/01/25/henrikkniberg/making-sense-of-mvp)
例えば ecbo cloak では事前に60組ほどに試験的にサービスを提供しました。具体的にはまず店のオーナー登録は Googleフォームで済まし工藤さんが立ち会ってユーザーとオーナーを繋げました。工藤さんは、ここまでできるのあればビジネスとして成立できると確信し、サービスを洗練させていったそうです。
このようにアイディアを実現するために大事なことは、自分の持っているリソース(経営資源)を自覚し、顧客のコアな課題は何かを聞いてプロダクト・サービスを作ることです。ユーザーに対して自分たちが作れる範囲で最大限のものを作ることが重要なのです。
では最後の項目で工藤さんのビジネスの起点と物流の未来をお聞きしていきます。
3. 起業家のこれまでとこれから – ecbo が見る物流の未来とは
工藤さんによると、荷物の流通量が増加する中、荷物を受け渡しする拠点数が大きく増加する見込みがなく、荷物がどんどん溢れ出出す未来が迫っていると考えられます。なんと荷物の流通量は2015年から2030年までに流通荷物数は3倍にもなると予想されています。

先述した ecbo pickup は Amazon と提携して契約店舗に宅配荷物を預かってもらい、ユーザーは自分家の近くの店舗に受け取りに行くという新しい物流を生み出そうとしてます。ドラーバーの効率性が増す上に宅配料金も減るのでユーザーとオーナー双方にメリットがあり持続可能なサービスになっていると考えています。
ecbo pickup は ecbo から社会へむけた新しい物流の提案でもあるのです。
以上が工藤さんの勉強会のお話になります。
今回、質問コーナーがとても盛り上がりました。そちらもいくつか共有したいと思います!

Q.コインロッカー難民の数はどうやって調べましたか?
A.潜在的なコインロッカー難民も多いのでそれも考慮し様々なデータを元に算出した。
Q.一番最初の資金調達はどうやったんですか?
A.Airbnb のビジネスで得た資金や以前からしていた転売ビジネスで初期資金を集めた。その後、ベンチャーキャピタル=VCから資金調達したり。最初は自分が1年生きていける資金は必要だと思う。
Q.起業家とは?どんな動機で起業するんですか?
A.起業がしたくて起業したわけではなく、お客さんに喜んでもらえることが楽しい。お客さんのニーズを満たすサプライズをするには規模が大きかったので結果として法人化した。自分の中で起業家とは「社会課題を、持続可能なサービスを創り解決する者」かな。自分がいたことで世の中がちょっとよくなれば嬉しい。
Q.色んな事業展開が見込めると思いますが、どのタイミングで決めますか?タイミングを決める物は何ですか?
A.自分のリソースを見越して最初は店舗拡大のみに尽力した。複数の事業を並行させてどちらの事業がインパクトあるかなどバランスとりながら資本的リソースを配分していく
起業に関するコアな話から起業アイディアを事業として展開させるまでの重要なポイントなどを工藤さんがお話くださり、とても有意義な時間になりました!気になる勉強会がありましたらぜひ一度お立ち寄りください!

執筆者
慶應義塾大学2年 ゼロイチCafeスタッフ 豊田玲奈
ゼロイチCafeにて勉強会の企画・運営を担当しています豊田です!戦略マーケティングや行動経済学に興味があります。最近、ゼロイチCafeの Instagram も活用し始めました!インスタグラマー目指して頑張っている最中です。
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