基礎から学ぶ企業会計と資金調達
こんにちは!ゼロイチCafeの運営スタッフの豊田玲奈です。
公認会計士・税理士の増田先生をお呼びして、企業会計の概要やスタートアップの資金調達推移について分かりやすく教えていただきました。普段馴染みのない「ファイナンス」ですが、勉強会を通して基礎的な知識から、実際の事業に直結するような実践的な知識まで深めることができました。
それでは早速、増田先生の勉強会を振り返っていきましょう!ファイナンスについて初歩からざっくり学びたい方や、起業したいけどどのように資金調達すればいいのか分からない方のお役に立てると思います。
講師:増田優樹
ふたつば会計事務所 代表
スタートアップ、中小企業の支援に加え、上場準備企業や大法人の会計・税務サポート、デューデリジェンス業務、株価算定業務、経営コンサルティング業務を行う。
目次
1. 企業会計のいろは
増田先生曰く、「会計の本質は自分の会社の状況を把握し、見つめ直し、将来の夢を描くための一つのツール」だそうです。会社を立ち上げて事業を拡大させたときに、会社が社会に与える影響力の一部を可視化したのが会計数値です。会計数値に関する書類は主に4つありまとめて計算書類と呼びます。
計算書類とは具体的に、貸借対照表と損益計算書と株主資本等変動計算書と附属明細書のことです。ここで重要なのは貸借対照表と損益計算書です。貸借対照表は、会社の資産・負債・純資産を表す財務諸表です。「資産=負債+純資産」という原則があり、貸借対照表では左側に資産、右側に負債と純資産が記されています。この表において「資産をどれだけ持っているか」「資産に対して負債はどれくらいか」を見ることで、「資金繰りが上手くいっているか」「会社が倒産しないか」などの会社の安全性・健全性を知ることができます。
一方で、損益計算書は会社の収益・費用・利益を表す財務諸表です。この表からは「どれだけ稼げているか」という会社の収益性を知ることができます。
貸借対照表と損益計算書について、オンライン上で簡単なグループディスカッションも行いました!グループディスカッションでは、貸借対照表からどちらの会社が安全かどうかや、損得計算書からどちらの会社が収益性が高いかを読み取りました。
貸借対照表の実際例を見てみると、左の貸借対照表の方は純資産がプラスであるため左の会社の方が安全であると分かります。また、左の表は流動資産>流動負債ですが、右の表は流動資産<流動負債です。ここから右の会社はすぐに返す借金が多いけれどすぐに現金化できる資産が少ないと読み取れます。そのため、右の会社は安全性が低いと判断できます。「純資産はどれくらいか」「資産に対して負債はどうか」「流動資産と流動負債はどれくらいか」を見ると、ある程度会社の安全性がみえてきますね。
グループデスカッションは分かりやすい2社の比較でしたが、実際においても「複数の会社を比較する」という視点はとても重要です。増田先生によると、会社を単体で見るのではなく、同じ業種や同じ規模の複数の会社と比較して見ることで、その会社の健全性・安全性がわかってくるそうです。そのため、「とある会社を単体で見たときどうか」「複数の会社と比較して見たときどうか」という2つの視点を持ち合わせるのがいいそうです。
続いて実際の企業の具体例を見ていきましょう。勉強会ではメルカリの貸借対照表と損益計算書を分析しました。
メルカリは売上は2017年から2019年にかけて順調に伸びていますが、最終的な収益性は良くなく当期純損失を生んでいます。メルカリの損益計算書を詳しく見ると、「売上高」も伸びていますが「販売費及び一般管理費」のシェアが一貫して大きいと分かります。これは、2019年に販売費の4割近くが広告宣伝費に使われ、給与手当が増加したからです。つまり、給与手当・広告費にメルカリの売上のほぼ全額を使ってしまっているのです。このことから、メルカリは事業拡大に向けて費用を使っている段階だという見方ができます。企業の損益計算書でここまで読み解くことができるとは驚きですね。
次のセクションでは資金調達を深堀していきます!
2. 資金調達の種類と特徴
資金調達の方法は2種類あります。エクイティファイナンスとデットファイナンスです。エクイティファイナンスは企業が株式を発行することにより、事業に必要な資金を調達することで、デットファイナンスは主に銀行などからの借り入れのことだそうです。
エクイティファイナンスで増資をする方法は公募・株主割当増資・第三者割当増資・転換社債型新株予約権・有償新株予約権・クラウドファンディングなどがあります。これらのファイナンスは原則的に返済期限がないですが、既存株主の持分割合が薄まることとなります。デットファイナンスには、日本政策金融公庫・保証協会付融資・資本性ローン・プロパー融資などがあります。これらは原則として、返済義務のある資金で支払利息が発生します。
以上の各ファイナンスの特徴を増田先生が簡単に図にまとめてくださりました。デットファイナンスは「お金を借りる」ことなので利息と返済義務がありますが、経営に口出しされることはありません。ただし、借金なので負債が増加してしまい、財務健全性が損なわれる可能性があります。エクイティファイナンスは返済義務がありません。代わりに、出資した投資家は株主という形になるため経営に口出しすることができます。
資金調達の種類と特徴を掴んだところで、スタートアップの資金調達推移をみていきましょう。
3. 実例で見るスタートアップの資金調達の推移
近年のスタートアップの調達社数は2017年をピークにほぼ横ばいとなっていますが、一社当たりの資金調達額は年々上昇しているそうです。例えば、マザーズ時価総額上位にいるSansan、freeeなどSaaS企業(Software as a Service)は、未上場で100億円以上の大規模ファイナンスを活用して急成長しました。こうした未上場のスタートアップはデットファイナンスとエクイティファイナンスをどのように使い分けて資金調達を行っているのでしょうか。
先ほど例に挙げたメルカリの上場までのファイナンス推移を増田先生と見ていきます。
2013年にVCから2.7億円を調達したときに優先株式の合計の25%を放出しました。次に38億円を調達した時も優先株式の18%ほど放出しました。このように、通常の株式より有利な条件がついた優先株式を発行することで合計40億程度を調達しました。その後、上場の前に優先株式を普通株式に転換し、株式分割を行いました。最後に、普通株式により50億程度調達した後に上場しました。この時、メルカリの株の内訳はどうなっているでしょうか。
株を発行するたびに社長の株式は減っていくため、メルカリの社長の持ち株は最終的に30%程度に落ち着きました。しかし、SO(新株予約権)を役員に付与することで、将来株に変えられる潜在的な持分比率を維持しているそうです。以上がメルカリの資本調達です。
一方で、全く異なる資金調達の例もあります。”スポットコンサル”「ビザスク」を運営する株式会社ビザスクです。こちらは社長が半分以上株を保持したまま上場しており、一人経営者が経営の意思決定をできるようになっています。また、ビザスクは5億程度の資金調達で上場に成功しています。少ない額で上場できたのは、to B特化+チケットによる資金の前受けだと考えられています。
ビザスクは2014年と2015年の資金調達でそれぞれ株の20%程度の放出しました。最後に2017年にデットファイナンスで日本政策金融公庫から1.5億円を調達して上場しました。2017年にローンを選んだ理由は、「資金調達時の経済条件・調達額、当時および将来における資本構成等を考慮した」とのことです。つまり、上場時に社長が半数以上の株を保持するために、株式による調達ではなくデットファイナンスで調達したと考えられます。増田先生によると、これらの資金調達の結果、株式会社ビザスクの株の過半数を創業者が保持していることで、社長の意思を反映しやすい会社になったそうです。例えば、役員の選任などの決議が単独で可能になりました。
社長が会社をどのように経営したいか、どのような規模の会社にしたいかによって、資金調達のやり方は変わることが分かりますね。
以上がファイナンスのいろはと事業紹介でした!いかがでしたか?筆者は普段学ぶ機会のない企業会計やスタートアップの資金調達方法の大枠をつかむことができました。皆さんも興味が湧いたらぜひ勉強会に参加してみてください。
執筆者
慶應義塾大学2年 ゼロイチCafeスタッフ 豊田玲奈
ゼロイチCafeにて勉強会の企画・運営を担当しています豊田です!戦略マーケティングや行動経済学に興味があります。最近、ゼロイチCafeの Instagram も活用し始めました!インスタグラマー目指して頑張っている最中です。
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