連続起業家に聞いた事業展開の失敗と成功
こんにちは!ゼロイチCafeの運営スタッフの豊田玲奈です。
数多くの事業展開に挑戦してきた山田真広さんをお呼びして、成功体験・失敗体験や泥臭い下積み時代のリアルについてお話いただきました。資金が尽きてから必死に這い上がる経験談はとてもインパクトがあります。
また今回は始めての取り組みとして、ビデオ会議システム Zoomを使用し、リモートでの開催となりました!普段の勉強会には参加できない遠方の方の参加もあり、大盛況でした。
それでは連続起業家の山田さんの勉強会を振り返っていきましょう。
講師:山田 真広
連続起業家
YUMMY,inc / TOMARUBA.incの共同創業者。渋弁.comの立ち上げ後、VCとエンジェル投資家を株主に向かい入れ、ITサービスの複数立ち上げを行う。シェアリングエコノミー関連の事業をスケールさせて売却。京都で京町屋・古民家再生・一棟貸し旅館のプロデュースと運営を行い、インバウンドビジネスの立ち上げを行った。現在は東京で複数のスタートアップの支援を行う。
目次
1. フードデリバリー事業での失敗
山田さんは最初に友人の誘いでフードデリバリー事業を起業しました。当時、フードデリバリーは海外で企業が資金調達に成功している分野でした。手始めに、ランチ単価の高い表参道で働くOLをターゲットにして、マーケティング調査をしました。しかし、ティザーサイト(とある商品を開発中にユーザーむけに発表するウェブサイト)を公開すると、渋谷界隈のIT会社で話題となったため、予定を変更し渋谷で事業を始めることにしました。山田さんは貯金なしで独立しましたが、弁当屋は粗利を取りやすいビジネスだったので、ある程度の生計を立てられると見込んだいました。アイキャッチの写真も弁当屋の知名度を上げるために着ぐるみで弁当をお届けしていた時の写真だそうです。
そうしてデリバリー事業を始めたものの、粗利を取れると思っていたお弁当が想定以上に売れませんでした。その結果、一緒に起業した友人と共にお互い電気もガスも止まり全財産1200円になってしましました。
2. 所持金1200円からの這い上がり
では山田さんはどのようにして所持金1200円から資金調達を得て複数の事業を展開させるまでに至ったのでしょうか。
フードデリバリーの事業が失敗した状態では、何人もの投資家に資金調達をお願いしても断られるばかりでした。そんな中あるVC から600万円の資金を得ることができました。これは、山田さんが「なんでもいいからお金ください」と頼み込み、必死の人柄を買われ半分ご好意で資金を得たそうです。
その後、VC から有名エンジェル投資家から出資してもらうように指示されました。その方は会社としても個人としてもベンチャー企業に投資しており、その投資先全てが上手くいっていることからベンチャーキャピタル界隈で有名な方です。山田さんはその方の元で1年間修行し複数の事業立ち上げに携わりました。その修行中にその方から与えられたミッションのおかげで大きく成長できたと山田さんは言います。
有名エンジェル投資家が出したミッションは、ビジネスを始めるために必要なスキルや思考を試していました。では駆け出しの起業家にどんなミッションを出したのか深堀りしていきましょう。
mission1:プログラミングを学べ
まずITサービスを立ち上げたいならプログラミングを学ぶべきと助言を受け、山田さんはITベンチャー企業にてインターンシップをしました。途中でプログラミングは自分に向いてないと感じあきらめかけた時に、「向いてることなんて何もないんだから言い訳する前に学べ」と叱責を受けました。その言葉に感銘を受けて必死にプログラミングを勉強したそうです。
mission2:海外VCの投資先を調べる
そもそも、日本で上手くいくベンチャーは海外で既に成功している事業であることが大半です。そのため、海外の有名なVCの投資先を調べれば、世界で今どのような業界・職種に資金が流れているかを把握できるのです。その時利用したのが世界中のベンチャー・スタートアップ・VC のデータベースサイト「 crunchbase 」です。
海外で資金調達に成功している事業を調査し、自分の興味ある事業をいくつかピックアップすることで、山田さんは自分がやりたい事業を絞れたと言います。世界の情勢を掴めるので、起業したいけどどの領域を選ぶべきか悩んでいる方にもおすすめです。
mission3:Yahooオクで10万を元手に1ヶ月でいくら稼げるか
こちらのミッション、皆さんなら何をして稼ぎますか?
「早起きしてテーマパークの限定商品を購入し転売する」「人気の数量限定コスメを購入して売る」などでしょうか。このミッションは安く仕入れて高く売るというビジネスができるかの見極め試験でもあります。大事なのはビジネスプランが見えているか・再現性があるかです。
mission4:NAVERまとめで記事を書いて何PV集められるか
山田さんは今までの経験をふまえて見切り発車せずに、人気記事のマーケティングから始めました。全体でPV数の多いジャンルを見つけ、関連記事を作成しました。すると旅行に関する記事が大きく伸びました。それがきっかけで自分達の得意分野に気づき、キュレーションメディア (Web上にある既存の情報を精選し、まとめ直して新たに公開しているメディア) を始めました。最終的に運営を中止するという結果になりましたが、mission1で得たプログラミングスキルのおかげで資金なしでサイトを作成できるまでに成長できたそうです。
mission5:人気通販番組をYoutube上に作れ
これも皆さんならどのようなチャンネルを作るでしょうか。山田さんは「面白ければバズるだろう」と考えて激しめのチャンネルを作りましたがPVは伸びなかったそうです。
これらのミッションを通して山田さんの成長ポイントをまとめてみました。
- プログラミングスキルのおかげでメディアを自作できて即行動や速い仮説検証が可能になった
- 動画作りも当然のように自分達で編集して作ろうという考えで行動できた
- 逆境を経験したからこそとりあえず死ぬ気で頑張ろうというマインドになった
- 物を売る時に戦略立てて行動する論理的思考はとても重要で、そのロジカル シンキングは訓練してできるようになった
どれもミッションに死ぬ気で答えてきた山田さんの努力の賜物ですね。
そうこうしてミッションに取り組むうちに投資してもらった600万円がなくなってしましました。しかし、エンジェル投資家の元で結果を残してないためここで諦めるわけにはいきません。そこで、山田さんは生き延びるために受託開発の営業を始めました。営業のやり方は至ってシンプルです。作れないシステムを作れると断言して仕事を得て死ぬ気でプロダクトを作って納品したそうです。結果、何とか売り上げも取れて生き延びることができたそうです。これもmission1でプログラミングを学んでいたおかげでした。
3. ホテル事業の成功と起業家へのアドバイス
その後、偶然始めた民泊が成功したため、民泊の事業を拡大することになりました。10室作ること自体が大変でしたが、上手く行ったので7000万の投資を得て事業を拡大したそうです。当時、民泊事業は法規制の関係で大企業が参入できない領域でした。そのため、大企業が参入できないうちに事業を拡大し、法改正によって大企業が参入できるようになったら大企業に事業を売るという計画でした。この時、出資先から言われたのが「2年で1000室作れ」というものです。山田さんは「とりあえず50室作る」を目標にしていましたが、出資先に「1000室作ることを考えろ」と言われたため1000室作ることを目標にしたらいつの間にか50室達成できたと言います。この経験から視座や目標を高く掲げることの大切さを痛感したそうです。
一方で、2000件以上の不動産に周り、徹夜で家具をDIYするなど死ぬ気で努力と行動はし続けていました。その結果事業は大きく成長しましたが、法改正の問題で撤退を決定したそうです。
その後も、山田さんは挑戦を続け「京都の古民家をホテルにする事業」を始めました。京都のホテルは価格競争が激しく差別化が必要です。そこで、京都の古民家としてのブランドを確立するために、不動産知識もなく京都のマーケティングも未経験ながら複数のプロデュース物件を手掛けました。
現在は次世代型無人コンパクトホテルの展開を手伝っており、同じホテル経営のドメインですが方向性が全く異なる場で活躍しています。
山田さんは自身の起業家としての経験をまとめると、
- スタートアップは安易にオススメはしない。
- 起業するなら計画性のある起業を。
- 本気で取り組めば誰かが必要なときに手を差し伸べてくれる。
- 打席に立つ回数をいかに多くするか。
- ボールが来ないところでバットを振ってもあたらない。市場選択は本当に大事。
- 他の人に出来なくて自分にしかできないことは何かを考える。自分の得意なことの把握、ポジショニングが大事。
- 独立した経験は凄く大きいし、他の会社からも重宝されるのが分かった。
と述べています。山田さんのリアルなベンチャー経験から得た貴重な教訓ですね。起業に興味ある方はぜひ参考にしてください!最後は恒例の質問タイムです。
4. 質問タイム
Q.色々やられてきた中で、1番楽しかった事は何ですか
A.基本辛い。1%の成功した喜びがとても大きいから、99%大変で辛くても頑張れる
Q.事業の領域やビジネスモデルを決めるときはどのように決めているか、お聞きしたいです
A.やりたいことが決めれないのであれば、先述した領域選択のやり方(mission2)を模倣する。その後、投資家の反応見てみるといい。一方で、自分のむいていること・やりたいことを持っている人はその領域でどうしたら世間で受け入れてもらえるかを探索した方がいい。
Q.エンジェル投資家等はどうして面倒を見てくれたのでしょうか?山田さんの人間性でしょうか?
A.「海外のベンチャーキャピタル調べてみて」というミッションで100社を求められていたが、1000社調べて自分の本気を伝えてた。その必死さを買われたのかも。
執筆者
慶應義塾大学2年 ゼロイチCafeスタッフ 豊田玲奈
ゼロイチCafeにて勉強会の企画・運営を担当しています豊田です!戦略マーケティングや行動経済学に興味があります。最近、ゼロイチCafeの Instagram も活用し始めました!インスタグラマー目指して頑張っている最中です。
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