今回はニュースがより良く分かるようになる金融の勉強会を為替アナリストの石丸さんに開催していただきました!その内容を皆様にもお伝えすべく、会の様子とともにまとめてみました。これを読めば明日からニュースが良くわかり、世の中の動きを掴めるようになります!

講師:石丸 伸二

大手金融機関 為替アナリスト

京都大学経済学部卒。2006年に某銀行へ新卒入社。2008年からリサーチ職を開始。2014年に為替アナリストのポスト新設に当たってNYへ赴任。南北アメリカ大陸の8ヵ国において政治・経済や市場動向を分析し、レポート執筆やセミナー講演のほかメディア出演を通した情報発信を担う。2018年に帰国。


目次

参加者の様子

会の冒頭で参加者の方が今回の勉強会に期待する内容についてそれぞれ喋っていただきました。簡単にいくつかピックアップすると、

  • 投資を行っている方から、日経平均や為替の今後の展望について聞きたいという実用的な話
  • 世界経済の動きを自分の本業である事業計画に役立てていきたいという、スケールの大きな話
  • 経済についてざっくりとマクロな視点を持ちたいという話
  • 石丸さんの以前の勉強会に参加し、内容に大変興味を持ちリピートしたという話

などが挙がりました!みなさんそれぞれいろいろな目的で参加してくださっています。

経済学と実社会

最初に経済学の導入としてGDPについて説明していただきました。

みなさん GDP(国内総生産)ってご存知でしょうか?新聞やニュースではよく見かけるワードですが、何だかとっつきづらいですよね。このワードについて石丸さんにすっきり解説していただきました。

経済の尺度たるGDP

GDP=付加価値の合計
小麦(+100)→ 小麦粉(+100)→ パン(+100)= +300

GDPは普段その国の経済の規模を表す尺度として使用されています。それはGDPがその国内で生み出される付加価値の合計で計算されるためです。例えば、小麦から小麦粉を、小麦粉からパンを生産する経済があると考えます。そして、小麦が100円、小麦粉が200円、パンが300円で売られています。

こうなったときの付加価値の合計を考えてみましょう。小麦粉は200円という値段から小麦に100円分付加価値が乗せられていて、パンも同様に100円分乗せられていることが分かります。小麦は0から100生み出されているので100円分、すなわち合計は300円分になります。以上がGDPの概念です。

次は経済(GDP)の表現方法に話が移ります。経済の構成要素は景気と物価です。言い換えれば、数量と価格によって表されます。

経済とは

経済=景気*物価=数量*価格

つまり、景気の変動は数量の変化で、物価の変動は価格の変化となります。一般に実質GDPの変動を景気と呼びますので、実質GDPとは数量の変化を意味します。これに物価すなわち価格の変化(=インフレ率)を加えたのが名目GDPであり、以下の式によって表されます。

実質GDPと名目GDP

実質GDP 成長率+ インフレ率 = 名目GDP成長率

この辺りは奥が深いので興味がある方はより深く調べてみると面白いかもしれません。

次に中央銀行の役割についてお話いただきました。中央銀行ってなんだ?という方もいらっしゃるかと思いますが、日本で言うと日銀と呼ばれるやつですね。中央銀行の主な役割は以下のものになっています。

中央銀行(中銀)の役割

中銀の役割:物価の安定、持続的経済成長

物価の安定とは通貨の価値の安定とも言えますね。物の価値と通貨の価値がバランスを取る、つまり同じものを同じ値段で買える状態を保ち続けるのが、中銀の役割になっています。そのために金利の上げ下げを行なって景気を調整しているのがよくニュースになっていますね。中銀の内容も調べ始めると各国での違いが明確になったりして興味深いのでぜひニュースなどで追ってみるのをおすすめします。

ここで少し雑談です。参加者の方の間で映画について話題があったので、映画の興行収入について石丸さんから質問がありました。現在興行収入一位である「アベンジャーズ/エンドゲーム」の興行収入を抜く映画は現れると思いますか?という質問です。

映画の興行収入の話

講師の石丸さんの意見は「120% 現れる」でした。それはインフレ率は長い目で見ると上がり続け、一本の映画を見るのに一人が払う額も上がり続けていくからです。ちなみにインフレ率を加味した実質の興行収入が最も大きい映画は未だに「風とともに去りぬ」だそうです。実質の興行収入でも記録を更新するような映画が今後出てくるのが楽しみですね。

最後に経済学と実社会についての全体感は以下のような関係になります。

実体経済と金融市場は互いに影響し合い、時に経済政策が介在する

中央銀行の行う金融政策と政府の行う財政政策が、実体経済と金融市場に影響を及ぼして経済は回っていくという形です。網羅的な解説できませんでしたが、重要なエッセンスはご理解いただけたのではないでしょうか。続いて、今回の本題である経済問題について話題を移していきましょう。

米中の対立

ここからは参加者の方の持っている知識を確認しつつQ&A形式で進めていきました。

米中の対立ってそもそも何が問題なの?

関税を掛け合ってることが問題であると参加者から回答があると、どちらから始めた喧嘩なの?といった質問が飛びました。答えは、トランプ大統領になって米国から始めた喧嘩だそうです。

アメリカと中国の間には貿易赤字が存在していて、それに対する国民感情をうまく支持率に繋げているのがトランプ大統領という構図があります。そして、この根底にはアメリカがナンバーワンの国であると言う自負と共産主義である中国に覇権を握らせるわけにはいかないという根の深い事情が存在しているのだそうです。

ところで国と国との間の貿易で起こる赤字って悪いことなのでしょうか?という話に移りました。

貿易赤字って悪いの?

結論から言うと、善悪はないそうです。それはミクロに見ると取引が成立している以上、お互いにメリットがある経済行動だからです。しかし、貿易赤字が発生する過程では国内の産業が衰退してしまうことが多く、結果として雇用が失われ、設備投資もできなくなり、経済が悪化するという面があるため、政治的に利用しやすいのだそうです。

次に香港デモについて話が移りました。なぜ香港デモはこれほど解決に時間がかかるのでしょうか?

香港のデモになぜ中国が怯えているのか?

香港は共産主義の中国において唯一自由貿易が許されている、いわば中国市場への資本主義の窓口になっています。その存在を揺らがせる事態であるため世界が目を光らせ中国は迂闊な対応ができないため事態が長引いています。

中国政府が軍事的に動けば、アメリカも保護の名目で動かざる得なくなり、緊張が高まる事態が懸念されます。両者ともそれは望まないのですが、解決の糸口は見つかっていません。

Brexit

続いての話題はイギリスのEU離脱、通称Brexitについてです。

そもそもなんでEXITしたいの?

イギリスにとって、EUの法律が国内法に優先することや移民の流入が顕著なことが国民の不満となっていたそうです。

次に、そもそもEUという仕組みに不備があるという話に移ります。

EUは未完成

EUには制度として不完全な面がいくつも存在します。一つはイギリスが通貨としてポンドを使用しているように域内で通貨が単一ではない、つまり金融政策の統一が未完成だという点です。そして仮に全ての国がユーロを使用するようになっても(=金融政策が統一できたとしても)、問題は解決しません。なぜなら、財政政策が統一できないからです。財政政策は国家の主権に基づくため、国という単位が残る以上、統一は不可能と言えます。これがEUやユーロ圏という制度の課題として残っています。

民主主義という制度の難しさ

イギリスの元首相チャーチルは1947年に、「民主主義は最悪の制度である。ただし、今までの全ての制度を除いては」というセリフを残しています。これは民主主義は現状最善の制度ではあるが、最適解ではないということを意味しています。確かに昨今の状況を見ても、アメリカやイギリスの例は国民感情は流されやすいということの現れともいうことができますね。

一方、共産主義について

一方、民主主義の反対である共産主義で政治を行なっている中国は経済成長率を6%で保っています。しかし14億人を纏めることは容易ではなく、絶えず経済を発展させなければ現状の政治体制を維持することは難しいと見られています。

最後にBrexitの今後の展望について

今後の展望について石丸さんのご意見をお聞きすると、EUからは抜けないかもしれないというのがご意見でした。一度は国民感情の加熱からあのような結果が出たものの、もう一度国民投票を行えば残留という結果になるのではないかと考えられているそうです。グローバル経済の現在は貿易が命綱であり、抜けるのは自分の首を絞める行為というのが一般的な見方だそうです。

これからの日本経済

最後に国際的な問題を見た上で、今後の日本経済について重要な問題点を3つチームに別れ考えてみました。一つのチームは、

  • 少子高齢化、人口減少
  • 食料、エネルギーの自給率が低い
  • 災害への耐性の低さ

を挙げていました。もう一つのチームは

  • 財政の未成熟
  • 少子高齢化、働き手の減少
  • 官民の協力がなく経済成長が期待薄

といった回答があがっていました。

ここで重要なのは「答えを出すには問題定義がいる」ということでした。

日本の問題と簡単に言っても千差万別さまざまな答えがあり、その分け方は(分野、国内外、年齢、個人と社会)など様々な分け方があります。そのため何を問題と捉えているのかを聞けば、その人が大切にしているものが分かるという結びで金融の勉強会の締めとなりました。

皆様もぜひ社会問題について学んでみて、自分が感じる問題は何なのか考えてみてください!


執筆者

慶應義塾大学4年 小松祥也

大学ではソフトウェア工学を学んでいます。ゼロイチCafeに来てくれた方の交流を活発にしてより深く学べる環境づくりをしていきたいと思います。

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